配当金の受け取り方、どの方式が一番手間いらず?シンプル徹底比較
はじめに
配当金投資は、手間をかけずに安定した定期収入を目指せる魅力的な投資手法です。株式を保有していれば、企業が利益を還元する際に配当金を受け取ることができます。しかし、この「配当金を受け取る」という行為にもいくつかの方法があり、それぞれに特徴や手続きの「手間」が異なります。
特に、日々忙しい中でも効率的に資産運用を進めたいとお考えの方にとって、この受け取り方の選択は、その後の管理の手間を大きく左右する可能性があります。配当金投資を「シンプルに、手間をかけずに」行うためには、受け取り方そのものもシンプルであるに越したことはありません。
この記事では、配当金の主な受け取り方式を比較し、それぞれのメリット・デメリット、そして「手間をかけない」という観点からどの方式が最もシンプルでおすすめできるのかを解説します。ご自身の投資スタイルに合った、最も手間のかからない受け取り方を見つける参考にしていただければ幸いです。
配当金の主な受け取り方式の種類
配当金の受け取り方式は、主に以下の4つがあります。
- 株式比例配分方式(証券会社の取引口座への入金)
- 登録配当金受領口座方式(あらかじめ指定した銀行口座への入金)
- 個別銘柄指定方式(銘柄ごとに指定した銀行口座への入金)
- 配当金領収書方式(自宅に郵送される領収書を郵便局などで換金)
かつては配当金領収書方式が一般的でしたが、近年ではオンライン取引の普及に伴い、証券会社の口座や銀行口座への直接入金が主流となっています。それぞれの方式について、手間がかかるかどうかという視点から詳しく見ていきましょう。
各受け取り方式の「手間」徹底比較
1. 株式比例配分方式
これは、保有する株式の配当金を、その株式を預けている証券会社の取引口座に直接入金してもらう方式です。
- 手間: 最も少ない
- メリット:
- 特別な手続きは不要で、証券会社の口座に自動で入金されます。
- NISA口座や特定口座を利用している場合、税金計算や納税が自動で行われるため、確定申告の手間を大幅に減らすことができます(特定口座・源泉徴収ありの場合)。
- 配当金が証券口座に入るため、そのまま再投資に回しやすいという利点もあります。
- 複数の証券会社で取引している場合、それぞれの証券口座に配当金が入金されます。
- デメリット:
- 複数の証券会社を利用している場合、それぞれの口座で配当金を確認する必要があります。
- 銀行口座に直接入金したい場合は、証券口座から銀行口座へ振り替える手続きが必要です。
【手間をかけない観点での評価】 この方式が、手間をかけずに配当金を受け取る上で最も優れた選択肢と言えます。 特に特定口座(源泉徴収あり)を利用している場合は、税金処理も含めて手続きがほぼ不要になるため、シンプルさを追求する方には強く推奨されます。
2. 登録配当金受領口座方式
これは、あらかじめ指定した一つの銀行口座に、すべての保有株式(複数の証券会社に預けている株式も含む)の配当金をまとめて入金してもらう方式です。
- 手間: 少ない〜やや少ない
- メリット:
- 配当金がすべて一つの銀行口座にまとまるため、全体の配当収入を管理しやすいという利点があります。
- 複数の証券会社を利用していても、受け取り口座は一つで済みます。
- デメリット:
- 事前に銀行口座を登録する手続きが必要です。
- NISA口座や特定口座を利用している場合でも、配当金の税金に関する通知(支払通知書など)が郵送される場合があります。特定口座(源泉徴収あり)の場合、税金は源泉徴収されますが、確定申告を検討する際には支払通知書の確認が必要になることがあります。
- 特定口座で源泉徴収が行われていても、確定申告で他の所得と合算(総合課税)または申告分離課税を選択する場合、この方式では自分で配当金額を計算・申告する手間が発生します。(株式比例配分方式の場合は、特定口座内で損益通算等が自動で行われ、計算・申告の手間が省けることが多いです。)
【手間をかけない観点での評価】 銀行口座でまとめて管理したい方には便利ですが、株式比例配分方式と比較すると、税金周りの情報確認や管理において若干の手間が発生する可能性があります。
3. 個別銘柄指定方式
これは、保有している個別の銘柄ごとに、配当金を受け取る銀行口座を指定する方式です。
- 手間: 多い
- メリット:
- 特定の銘柄の配当金だけを、特定の口座に入金させたい場合に利用できます。
- デメリット:
- 保有する銘柄が増えるたびに、その都度、受け取り口座を指定する手続きが必要です。
- 配当金の税金処理が複雑になる傾向があります。 特定口座を利用していても、この方式を選択すると源泉徴収が行われず、原則としてご自身で確定申告をして納税する必要があります。(証券会社によっては、源泉徴収ありの特定口座を選択していれば、この方式でも源泉徴収される場合もありますが、手続き上の手間は残りやすいです。)
- 配当金の支払通知書なども銘柄ごとに届くため、管理が煩雑になります。
【手間をかけない観点での評価】 個別の目的がある場合を除き、手間をかけずに配当金投資を行うという目的においては、この方式は避けるべきです。手続き、管理、税金処理のいずれにおいても最も手間がかかる可能性が高い方式です。
4. 配当金領収書方式
これは、企業から郵送されてくる「配当金領収書」を、ゆうちょ銀行や郵便局の窓口に持参して換金する方式です。
- 手間: 非常に多い
- メリット:
- 証券口座や銀行口座を持っていなくても配当金を受け取ることができます(現在は非常に稀なケースですが)。
- デメリット:
- 領収書が自宅に郵送されるのを待ち、有効期限内に郵便局などに出向く必要があります。
- 領収書を紛失するリスクがあります。
- 配当金の税金は源泉徴収されますが、確定申告をするためには、届いた領収書や支払通知書を自分で管理し、金額を計算する必要があります。
- 複数の銘柄を保有していると、その数だけ領収書が届き、換金手続きの手間が膨大になります。
【手間をかけない観点での評価】 現代の投資環境においては、最も手間のかかる非効率な方法です。 配当金投資をシンプルに行いたいのであれば、この方式を選択する理由はほとんどありません。
手間をかけないための最適な受け取り方式は?
配当金投資を「手間をかけずに」「シンプルに」行うことを最優先に考えるのであれば、「株式比例配分方式」が圧倒的に有利です。
- 手続きがほとんど不要。
- 証券口座への自動入金で管理が楽。
- 特定口座(源泉徴収あり)なら税金処理も自動で完結。
特に、新NISA口座や特定口座を活用して投資を行っている方は、株式比例配分方式を選択することで、配当金の受け取りから税金処理までの一連の流れを非常にスムーズに行うことができます。
登録配当金受領口座方式も、複数の証券会社を利用しつつ、配当金を銀行口座でまとめて管理したい場合には選択肢に入りますが、税金関連の書類管理や手続きの手間が若干増える可能性があります。
受け取り方式の確認と変更方法
現在、ご自身の配当金の受け取り方式がどのように設定されているかは、お使いの証券会社のウェブサイトや取引ツールの口座情報ページで確認できます。
もし現在の設定が「株式比例配分方式」以外になっていて、手間を減らしたいとお考えであれば、多くの場合、証券会社のウェブサイトからオンラインで変更手続きが可能です。変更手続き自体も非常にシンプルで、数分で完了することがほとんどです。具体的な手順は各証券会社によって異なりますので、ご利用の証券会社の案内をご確認ください。
まとめ
配当金投資において、受け取り方式は一見些細なことのように思えるかもしれません。しかし、「手間をかけずに」「シンプルに」運用を続けるためには、受け取り方そのものも手間のかからない方法を選択することが非常に重要です。
ご紹介した4つの受け取り方式の中で、最も手間がかからず、シンプルに配当金を受け取れるのは「株式比例配分方式」です。 特に特定口座(源泉徴収あり)を利用している場合は、税金の手続きまで自動化されるため、配当金投資を継続する上での負担を大きく軽減できます。
ご自身の配当金の受け取り方式を確認し、もし手間のかかる方式になっていたら、株式比例配分方式への変更をご検討ください。この一手間で、配当金投資がよりシンプルで続けやすいものになるはずです。