ズボラさんの配当金投資

特定口座でも知っておきたい 配当金にかかる税金の手間を最小限にする判断基準

Tags: 配当金投資, 税金, 特定口座, 確定申告, 所得税

はじめに:特定口座(源泉徴収あり)と配当金課税の基本

手間をかけずに配当金投資を行う上で、多くの投資家が利用されているのが特定口座(源泉徴収あり)です。この口座を利用すると、証券会社が配当金から所得税や住民税をあらかじめ差し引いて支払い(これを源泉徴収といいます)、納税を代行してくれます。これにより、原則として確定申告は不要となり、税金に関する手間が大幅に削減されます。

しかし、特定口座(源泉徴収あり)を利用している場合でも、確定申告を行うことで税金が還付されたり、税負担が軽減されたりするケースが存在します。もちろん、確定申告には一定の手間がかかりますが、ご自身の状況によってはその手間をかけてでも申告するメリットがあるかもしれません。

本記事では、特定口座で配当金を受け取っている方が、税金に関する手間を最小限に抑えつつ、確定申告を検討すべきケースとその判断基準、そして確定申告をする場合の手間を減らす方法について解説します。

特定口座(源泉徴収あり)での配当金課税の仕組み

特定口座(源泉徴収あり)で国内上場株式や国内籍ETFから配当金を受け取ると、通常、以下の税率で源泉徴収が行われます。

この源泉徴収により納税が完結するため、確定申告は不要となります。これが「手間いらず」の大きなメリットです。

手間いらずの特定口座でも確定申告を検討する理由

特定口座(源泉徴収あり)が大変便利な仕組みである一方で、あえて確定申告を検討することで、税負担が有利になる場合があります。主な理由は以下の3点です。

1. 所得状況による有利不利(総合課税の選択)

配当所得は、他の所得(給与所得、事業所得など)と合算して税額を計算する「総合課税」を選択することができます。所得税は所得が多いほど税率が高くなる「累進課税」のため、他の所得が少ない方の場合、総合課税を選択し、他の所得と合算することで、源泉徴収された税率(20.315%)よりも低い税率が適用され、納めすぎた税金が還付される可能性があります。

2. 配当控除の活用

国内上場株式の配当金には「配当控除」という制度があります。総合課税を選択して確定申告を行うと、一定の金額を所得税や住民税から差し引くことができます。これにより、税負担を軽減することが可能です。ただし、配当控除は総合課税を選択した場合にのみ適用できます。

3. 譲渡損失との損益通算

同じ年の特定口座内で、株式や投資信託などの売却によって損失(譲渡損失)が発生している場合、確定申告(申告分離課税または総合課税)を行うことで、その譲渡損失と配当所得を相殺(損益通算)することができます。これにより、配当所得にかかる税金を軽減できます。損益通算してもなお損失が残る場合は、一定の要件のもと、翌年以降に損失を繰り越すことも可能です。

確定申告を検討するためのシンプルな判断ポイント

では、ご自身の状況で確定申告を検討すべきかどうかを、手間をかけずに判断するためには、どのような点を確認すれば良いでしょうか。

1. ご自身の年間所得(配当所得以外)を確認する

最も重要な判断ポイントは、配当所得以外の年間の所得金額です。特に、事業所得や給与所得など、他の所得があまり多くない方は、総合課税を選択することで有利になる可能性があります。ご自身の年間所得が確定した後に、税務署のウェブサイトなどで提供されている所得税の速算表などを見て、配当所得を合算した場合の税率を概算してみるのが良いでしょう。具体的な金額の目安は個々の状況で異なりますが、他の所得が少ないほど、総合課税が有利になる可能性が高まります。

2. 特定口座年間取引報告書を確認する

証券会社から送付される「特定口座年間取引報告書」は、確定申告を行う際に大変重要な書類です。この書類には、その年に受け取った配当金の金額や源泉徴収された税額、そして売却による譲渡所得や譲渡損失などがまとめて記載されています。この報告書を確認することで、ご自身の配当所得や譲渡損益の状況を簡単に把握できます。

3. シンプルな目安を意識する

一般的に、配当所得を含めた課税される所得合計額が、所得税の税率が20%以下となるような金額(課税される所得金額が330万円以下など。税制改正により変動する可能性があります)であれば、総合課税を選択することで、配当控除の適用と合わせて源泉徴収税率(20.315%)を下回る可能性が出てきます。ただし、これはあくまで一般的な目安であり、個人の所得控除の状況などによって異なりますので、ご自身の状況に合わせて慎重にご判断ください。迷う場合は、税務署や税理士に相談することも可能です。

確定申告を選択した場合の手間を減らす方法

もし確定申告をした方が有利であると判断した場合でも、できるだけ手間を減らしたいものです。以下の方法を活用しましょう。

1. 特定口座年間取引報告書を利用する

特定口座(源泉徴収あり・なしに関わらず)の取引がある場合、証券会社が発行する「特定口座年間取引報告書」を確定申告書に添付(または提出)することで、所得金額や税額の計算根拠とすることができます。これにより、自分で一つ一つの取引を計算する手間が省けます。

2. e-Tax(電子申告)を利用する

国税庁が提供するe-Taxを利用すれば、自宅のパソコンなどからインターネットを通じて確定申告を行うことができます。税務署に出向く必要がなく、必要書類の添付もデータで行えるため、郵送や持参に比べて手間を削減できます。特定口座年間取引報告書などのデータ連携にも対応している場合があります。

まとめ:手間をかけずに賢く判断

特定口座(源泉徴収あり)を利用した配当金投資は、税務上の手間を大幅に軽減できる大変便利な仕組みです。しかし、ご自身の所得状況やその年の譲渡損益によっては、あえて確定申告を行うことで税負担が有利になるケースも存在します。

日々の運用は特定口座の手間いらずを活用しつつ、年に一度、ご自身の他の所得や特定口座年間取引報告書を確認し、確定申告をした方が有利になる可能性があるかどうかをシンプルな判断基準に沿って検討することが、手間をかけずに賢く配当金投資を行う上での重要なポイントと言えるでしょう。最終的な判断は、ご自身の責任において行ってください。